一通のメール
5月13日(日)、私は立川高校に取材に行きました。カードは総体都大会一次トーナメントBブロック1回戦、立川vs駒場です。
すでに記事にしておりますが、先制した立川がリードしている時間が長かったものの、地力のある駒場が後半ファウルで得た絶好の位置でのフリーキックを直接決めて追いつき、延長で突き放したのです。
この試合でその同点となるファウルをしてしまった立川DFカルテットの一人、背番号7の選手がコメントを書き込んでくれました。そして昨日、彼がこの試合で感じたことをメールしてくれました。
それが下の文章です。
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本当に冷静さを欠いてしまい、もうがむしゃらに体をボロボロにしてでもっていう感じのプレーしかできなくなってしまい、あのようなファールを犯してしまいました。
そして2点目も相手のクロスを僕がフリーだったのに焦ってクリアミスしてしまいそれを押し込まれたのです。
サッカーに限らず何事も大事なのはがむしゃらなプレーをしていても心は常に冷静でなくてはいけないと言うことがとても身にしみて分かりました。
言い訳になってしまいますが、今回は慣れないポジションを任された上、相手は駒場、そしてケガしてるセンターの奴の為にも負けるわけにはいかない。冷静でいられることがとても難しい条件が揃ってしまいました。。
僕ら立川はT1のチームに当たっても延長戦に持ち込んだりする力はあるのですが、やはり底力、体力みたいなことで負けてしまうのです。
東京朝鮮の時も試合内容もほぼ互角で延長戦、一対一が3~4回あったりしたのですが決めきることができなかったのです。DFではあのGKのファインセーブ(僕らにとっては彼の普通のセーブですが。笑)で、危機を救い、いよいよPK戦かと誰しもが思った残り20秒、ゴール前でFKを与えてしまいそれをきっちり決められてしまいました。
ちなみに決めたのは現在2年生の確か国体に入ってるアンビョンジュン選手でした。彼はあの試合2ゴールです。
残った4人の3年生、(あの試合に出てた12番と19番を含む)と1、2年の新チームになって僕らの2度の敗北(新人戦の地区決勝で三鷹に0-1で負けたのを入れれば3度)を見た後輩は根本的な部分、体力、筋力といった所から強化をはかっているそうです。新チームには都大会で勝って結果を残せるチームになって欲しいと思っています。
僕個人として進路は学芸大学を考えています、将来教職に就きたいと思っているのです。部活に入るかは分かりませんがどんな形でもサッカーには関わっていくつもりです。
試合で負けた悔しさをバネに、延長戦まで戦ったあの気力を頼りに受験を戦っていきます。
吉報(大学合格)を伝えることができたら嬉しいです。
ありがとうございました。
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このメールには胸が熱くなりました。
本来そのポジションでプレーするはずの仲間がケガをして出られず、彼が不慣れながらもこのポジションに入ってプレーしていたのです。
駒場攻撃陣に必死にくらいつき、足をいつもより遠くまで投げ出して守ろうとしていたあの姿は、この試合に出られない仲間のためでもあったんですね。私は直に見ましたが、本当に体を張ってました。
今の世の中が何か殺伐としていて、自分さえよければいいというような人が多いなぁと感じていた私は、彼のこのメールを読んで、そう感じている自分自身が会社でも家庭でも「独りよがりになってはいなかったか」と恥ずかしさがこみ上げてきました。
そして結果的に失点に結びついたファウルから「何事も大事なのはがむしゃらなプレーをしていても心は常に冷静でなくてはいけない」と学ぶ彼の姿勢に、私の方が学ぶ姿勢を持たなければならないと思いました。
彼は考え抜いた末にこの総体で高校サッカーに別れを告げ、学芸大を志望校として受験に向けた準備に入ることを選択しました。そして将来は教職に就くという目標を持っています。
わが国にはこのようなはすばらしい高校生がいます。
しかし、私たち今の大人は、彼らに「ああいう大人になりたいな」と思ってもらえているでしょうか。
メールをくれた彼のこれからの人生が、希望に満ちたすばらしいものになるよう祈っています。
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