正智深谷vs関東第一
Kumazemi Report | 2017-01-02 |
第95回全国高校選手権2回戦 |
浦和駒場スタジアム(晴) |
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あけましておめでとうございます。私kumazemi、御年52になります。再び(無理しない程度に)動き出しますので、皆さまどうぞよろしくお願いいたします。
快晴の浦和駒場スタジアム、地元埼玉代表の正智深谷が登場で2階席もオープンにしてファンを出迎えます。両校2階応援席にも応援の横断幕や巨大ユニフォームが展開され、関東の強豪校同士の対決はキックオフ前から大いに盛り上がっていきました。
正智深谷キックオフで始まったこのゲーム、序盤は正智深谷の相手の出方を窺うようなゲームの入りに、関東第一は得意のポゼッションサッカーで優位に展開していきます。
関東第一は13番、8番、10番の選手が織りなす中盤のゲームコントロールに、16番と6番の選手がサイドから起点づくりを狙う組み立てです。
そんな中、いきなり観客席がどよめくプレーが生まれます。前半8分、関東第一の最初のCKのチャンスに、ショートコーナーからゴール前の攻防に移ろうとした瞬間、ペナルティエリアで正智深谷の選手にハンドの判定、関東第一がPKを得ます。これをいったんGKが弾きますが、こぼれ球を11番の選手に押し込み、関東第一が先制します。
先制された正智深谷ですが、なかなかエンジンがかからず、関東第一の速い中盤でのチェックもあって攻撃の糸口を見いだせず、正智深谷にとってはかなり苦しい展開になります。何とかサイド6番の選手を生かした攻撃を仕掛けたい正智深谷ですが、統率されたDFラインとアタックするか否かの判断が的確な関東第一守備陣を突破することができません。
ただ、先制した関東第一ですが、ゲームは支配するものの、それほど多くの決定機を作れたわけではなく、関東第一の実力からすれば、リードしているものの攻めあぐねている展開だったとも言えると思います。
そんな中で25分、正智深谷の17番の選手が関東第一13番の選手の顔付近に足を上げる危険なプレーをしてしまい、一発レッドカードとなります。ただでさえ押し込まれていた正智深谷は10人での戦いを余儀なくされ、さらに追い込まれていきます。この場面では孤立する正智深谷11番の選手の苦しそうな表情が印象的でした。
前半は圧倒的に関東第一優位のまま1対0で折り返します。正智深谷にはシュートらしいシュートはほとんどないまま前半は終わりました。
しかし、後半は正智深谷がアタマから2番の選手に代えて25番の選手を投入、流れを引き寄せにかかります。正智深谷は徐々にリズムを掴みながらCKを得るなど、前半より攻守がアグレッシヴになっていきます。
対してリードする関東第一は玄人を唸らせるようなポゼッションサッカーで前掛かりになる正智深谷をいなすように巧みなパスワークで翻弄します。ここで関東第一はベンチが動き、49分に23番の選手を、56分に27番の選手を投入します。この直後の65分には左CKから怒涛の二次三次攻撃を仕掛け、正直流れ的にこのまま関東第一の逃げ切りだなと思いました。
あと、私はここまでの展開を見て、何を今さらですが、そう簡単にはボールを失わない個のスキルというものがどれほど重要かというものも感じた次第です。
74分には関東第一が15番の選手を投入、対する正智深谷も75分に20番の選手を投入と両校ベンチワークも慌ただしくなってきます。圧倒的にボールを支配してこのまま逃げ切りを図る関東第一に対して、1人少ないがゆえにやや一か八か的な側面もありながらも必死に同点機を狙う正智深谷、という展開の中、79分に正智深谷が右CKのチャンスを得ます。
ここでドラマが生まれます。CKからのボールをヘッドでつないだことで生まれたゴール前の混戦から、正智深谷4番の選手が見事に右上を狙い澄ましたインサイドキックのシュートで1対1の同点となります。あと1~2分で関東第一が勝利を手にするという状況の中、まさしく偶然生まれたワンチャンスをモノして追いつくという、これこそサッカーの怖さともいうべきシーンでした。
一度は敗戦を受け入れたであろう正智深谷はもはや怖いものなしとなった勢いでさらにアグレッシヴに攻撃します。ここで40分+2分、つまりアディショナルタイムの中で、正智深谷は関東第一の選手のハンドの反則からPKを得、これを10番の選手が決めて2対1と逆転します。
試合はラスト5分の大逆転劇で正智深谷が2対1で勝利、3回戦へコマを進めました。
サッカーは何が起こるかわからない、勝負は下駄をはくまでわからない、とはよく言いますが、まさしくこの言葉どおりの展開でした。
正直申しまして、今日のゲームを観る限りでは力は関東第一の方が上回っていたのではないかと思います。80分のうち正智深谷は埼玉大会を制したチーム力をほとんど発揮することはできていませんでした。
しかし、「流れ」を失わないよううまくこれに乗り、ほとんど数えるくらいしかなかったチャンスのうち2回を得点に結び付けました。
敗れた関東第一ですが、2回戦止まりは本当に残念なもっともっと見たかったチームです。テクニック、戦術眼に優れたすばらしいチームでした。ただ、これはあくまでも私の観た感想ですが、もっと激しく厳しくギリギリを冒してでも相手ゴール前に迫る迫力があったら、今日の正智深谷の調子であれば3点くらい取れていたのではないでしょうか。
上手くて強いチームが必ず勝つわけではないのが選手権ですが、今日のような終盤の大逆転劇というのは観る者の心を打ちますね。これが選手権なんです。
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