青森山田vs野洲
Kumazemi Report | 2012-12-31 |
第91回全国高校サッカー選手権1回戦 |
駒沢陸上競技場(晴) |
![]() |
|
![]() |
ここでどちらか一校が大会を去らざるを得ないというのは非常にさびしいです。そんな思いにさせる1回戦のカードです。
野洲といいますとセクシーフットボールというわけなのですが、ちょっと前に日経産業新聞でセゾンFCの岩谷監督の指導哲学が連載されており、この記事を読んでなるほどとちょっぴり理解してこの試合の観戦に臨みました。
対する青森山田は黒田監督率いる北の雄であり、日本サッカーの将来を背負って立つ柴崎岳を産んだ強豪です。長い冬には一面雪深くなる環境下にもかかわらず毎年すばらしいチームを創ってくる黒田監督の指導育成力には特筆すべきものがあります。
ゲームはいきなり開始2分に青森山田が敵陣約35mくらいの位置で得たFKからビッグチャンスを掴みます。
まだエンジンかかってなかったか、このシーン、野洲DF陣は完全に相手をフリーにしてしまいました。打たれたヘディングシュートがGK正面だったので事なきを得ましたが、落ち着いて合わされていたら失点につながっていたと思います。開始早々からこういう感じでしたのでお互いクリエイティブに決定機を演出し合うゲームになる予感がしました。
しかし、これは予感に過ぎませんでした。この後は両校意地のぶつかり合い、相手に合わさずあくまでも自分たちのスタイルを貫き通す両校は、これ以後なかなかゴール前でのチャンスを創れません。というかお互いに創らせません。
このような中、前半15分過ぎくらいだったと思いますが、野洲の選手と青森山田のGKが接触、青森山田GKが負傷してしまいます。GKゆえ長いピッチ内治療となり、かなりの時間プレーが中断しました。この影響で前半のアディショナルタイムは9分となり、これには場内もどよめいていました。
ですが、このアディショナルタイムに青森山田にスーパープレーが飛び出します。
前半40+8分、右サイドからドリブルでビルドアップしていた青森山田8番池上選手が、仲間の選手が猛然と池上選手を追い越して右サイドに流れて瞬間的にできた前の空間を見逃さず、ここで右足を一振り、ボールは無回転気味にアウトにかかった軌道の読みにくいミドルシュートになります。
これが見事にゴールに突き刺さり、ややセクシーフットボールに押され気味だった青森山田が先制します。一振りで劣勢を挽回する青森山田の底力をまざまざと見せつけられました。
青森山田1点リードで迎えた後半ですが、ここから野洲持ち前の高速パス交換ポゼッションサッカーが一気に噴き出します。「相手が来るとパッとはたき、来ないと少し持って嫌なところに出す。ボールは常に相手より遠い方の足で正確にコントロールし、ドリブルはスピードだけに頼らず相手の重心を見て逆を突く。ゴールに近くなればなるほどダイレクトプレーを多用して狭いところを一瞬で抜いていく。」野洲は本当に上述した日経産業新聞連載記事のとおりのチームです。
そして後半14分、右サイドの崩しからゴールラインぎりぎりまで抉ってゴール前にボールを供給、これにファーポスト付近から11番大本選手が押し込んで野洲が同点に追いつきます。
ここから野洲の流れになり、青森山田は防戦一方になります。それでもこの野洲の攻撃をことごとく跳ね返すのですから青森山田の守備陣もすごいです。その青森山田は後半終了間際の左CKにヘッドで合わせますが、これが惜しくもポストを叩きゴールにはなりませんでした。
そしてゲームはこのまま1対1で終了、延長はないためこの1回戦屈指の好カードは無情にも即PK戦となり、青森山田が4-2で野洲を退けて2回戦にコマを進めました。正GKが負傷退場し、なおかつ1番目のキッカーがGKの止められた中でのPK勝ち、精神面もかなり鍛えられています。これで青森山田は勢いがつくかもしれませんね。
コメント