実践学園vs関東第一
Kumazemi Report | 2012-11-17 |
第91回全国選手権東京Bブロック決勝 |
味の素フィールド西が丘(雨) |
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Aブロック決勝の熱気冷めやらぬまま、東京Bブロックの決勝戦が行われました。対戦カードはこちらも東京を代表する2校、関東大会東京予選と総体東京予選を準優勝し、総体ではベスト16まで勝ち進んだ実践学園ともう1校は関東2部プリンスリーグで現在4位につける関東第一となります。
恥ずかしながら、今季1戦も関一の試合を観ていなかったため、個人的には昨年の準優勝チームからどのような変貌を遂げているかを確認するうえでも絶好の機会となりました。
戦前、皆さんがどのような試合を予想されていたかは分かりませんが、両チームのストロングポイントがぶつかり合った素晴らしいゲームとなりました。
試合序盤、お互いに失点を避けるためセーフティーな運びを意識してか、リスクを背負ったプレーではなく相手の出方を見つつのリアクションサッカーから入ります。
3分、実践8番の選手が左ペナルティエリア内でシュートフェイントから切り替えし、右足でクロスを入れます。しかし、ここは関一のGKがパンチング。ここで関一のGKに触れないわけにはいきませんね。プロ注目のGK渋谷君、この日もキャッチング、キック、コーチングがさえわたります。特にキックの精度は本当に素晴らしいですね。
19分ロングボールに反応した関一9番が胸トラップから抜け出しシュート。こちらは実践GKがセーブします。15分を過ぎ、やや関一が試合のペースを握りだします。18番の細かいパスやドリブル、15番の精度の高いパスからの仕掛けが目立ち始めます。サイドでのトライアングルを作り、そこでワンタッチ・ツータッチではたいて相手を崩し、中央のFWへ供給していく関一のサッカーが徐々にテンポ良く展開します。
しかし、実践はチーム全体でのハードワークによる守備を徹底し、ボールを回されても、ボランチとDFの距離感が良く関一の前線に決定的な仕事をさせません。33分には実践の8番が右に展開し、センターリングが上がります。8番が自ら走り込んでヘディング。しかし、関一DFの寄せも良くシュートはバーを越えます。ここまで3試合で11得点1失点の関一に対し前半は実践の深町監督の言うとおり、どちらかというと失点をせずに隙を狙っていく実践のゲームプラン通りに進んだように思います。
後半は実践がどこまで高い位置から前半のようなプレスをかけ続けられるか、関一はそのプレスをどのように崩すかが見所となります。
後半5分、関一が右サイドのトライアングルから細かいパスとドリブルで18番が抜け出しチャンスを作ります。しかし、ここも実践DF陣がしぶとくクリアします。
逆に7分の実践、関一のパスをインターセプトし2番の選手がミドルシュート、バーを越えます。
9分に関一8番に代えて19番(1年生)がピッチへ送り込まれます。まだ線の細い選手ではありますが、関一らしい卓越した技術の持ち主です。この交代をきっかけに、関一はセカンドボールが拾え出し、更に左サイドでの支配率が高まり、14番の選手が躍動します。
それに対し、実践はサイドのケアと攻撃への早い切り替えを行うためやや疲れの見えた7番に代え13番を投入します。
その直後、関一9番がペナルティエリア付近でファールをもらいます。これまでの流れから14番がキッカーとなるかと思いきや・・・・GKがキッカーとしてセットします。私も勿論そうですが、会場内がザワつきます。コロンビアのイギータ、パラグアイのチラベルトが頭をよぎります。
前半から精度の高いキックを見せていたGKですので期待が高まりましたが軌道が低く壁に弾き返されてしまいます。
15分以降も関一のポゼッションが続き、ボランチの7番、15番も攻撃参加の時間が増え、厚みがまします。17分、関一はインターセプトから15→7→9→10とつなぎシュートまで持ち込みますが、ここも実践DFが体を寄せ良い体勢で打たせません。
ここから一進一退の攻防が続きますが、どちらも決定的な場面を作ることができないまま時間だけが過ぎていきます。時間だけが過ぎたと書きましたが、内容は非常に濃く、後半のこの時間帯であっても集中力を切らさず、球際も厳しくチェックする両チームは本当にレベルの高いことを証明しています。
このまま延長に入るかと思われた38分、後半から勢いを増していた関一14番から突如矢のようなアーリークロスが入ります。この日の天候は雨、スリッピーなピッチに走るボール、中に走り込んだ9番がスライディングで足を伸ばします。当てれば確実に点につながる場面でしたが、ボール一個分届かず流れます。この場面、実践は本当に肝を冷やしましたと思います。
しかし、ドラマはここから始まります。
実践はDFからのロングボールを左サイドへ。関一DFはクリア。スローインから実践はコーナーフラッグあたりでキープし、狙い通りコーナーキックを得ます。ロスタイムに入った41分のコーナーキック。残りは1~2分程度、後半途中から投入された14番がボールをセットします。関一GK前に実践20番と4番が貼りつき動きを封じます。
14番によりインフロントにかけ蹴られたボールはニアサイドポスト付近へ弧を描きます。関一GKと実践4番が同時にジャンプした次の瞬間、ボールはGKの手をかすめることなくネットを揺らしました。一瞬静止画のように会場が静まり返り、一気に歓声・悲鳴が入り混じります。
1-0で実践リード。残り1分。圧倒的な攻撃力を持つ関一も時すでに遅く、無情にもホイッスルは鳴り響きます。7割のボール支配率から果敢にゴールに迫った関一、それを真っ向から跳ね返しワンチャンスをものにした実践、どちらも本当に白熱したゲームを繰り広げてくれました。
勝利をつかんだ実践は、あれだけボールを支配されながらも誰一人走ることを止めず戦い抜きました。あの走力には本当に脱帽ですね。
残念ながら2年連続決勝で涙をのんだ関一ですが、噂どおりの攻撃力、その攻撃力を支えるDF陣、素晴らしいチームであることに嘘はありませんでした。
全国行きの切符を手に入れた実践は、30日の開幕戦を聖地国立競技場で福岡代表東海大五と戦います。13:10kick off。東海大五は90回大会も開幕戦でしたね。くじ運強い!!
取材:おび天
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