「いい選手」とは
サッカーは手以外の部分を使ってボールを相手のゴールまで運ぶゲームです。
足元にあるボールは次にキックを通じて味方やスペースや相手ゴールに運ばれていきます。運ばなければサッカーになりません。よって自身でボールを保持している場面では、そのプレーヤーは足元のボールを正確に扱うという行為よりも周囲をよく観るという行為に集中する必要があります。じゃないとどこに運べばいいのかわからず、次に進めないからです。
サッカーとは、私が好きな山本七平さんの刊行物から言葉を拝借しますと状況判断⇒決心⇒処置の繰り返しであると言えます。そして、プレーヤーの優劣を判定する基準というのは、ゲーム中に繰り返されるこのサイクルのスピードと精度なのでしょう(あらためて声高に叫ぶことでもないですが)。このサイクルの精度が高いプレーヤーはいいプレーヤーであり、このいいプレーを担保する個人能力として走る速度やボディバランス、ジャンプ力、体幹強度、持久力などがあるのだと思います。「処置」にボールのあるなしは関係ありませんので、このサイクルはゲーム中いたるところで行なわれています。私はこのサイクルについて、高校年代が上位カテゴリーに挑戦する際に最もしっかりと体得しておかなけらばならないものとして『CDA(Catch⇒Decision⇒Action)サイクル』と勝手にネーミングさせていただきます。
なお、付け加えますがサイクルの3番目の「処置」には「作戦」が必要で、「作戦」とは相手の「弱点」もしくは「死角(ウラ)」を突くことであることは言うまでもありません。
なぜ、こんなことを書いているかといいますと、いくつかゲームを取材していていわゆる強豪校とそうでない高校が当たった場合の試合結果は、ほとんどが『CDAサイクル』のレベル差ではないかと感じたからです。
高校生の公式戦なんかを取材しますと、ゲーム開始前の調整練習では、リフティングなどで体をほぐし、その後フリーの状態でのポストシュートやクロスに合わせる練習などが多いですね。リミテッドプレッシャーでやっているところも多少はありますが、ほとんどがフリーでやってますので上手だなぁという感じは掴めたりします。
でもこの練習だけを見ていると強豪校もそうでない高校の子もそんなに大きな技術差が感じられないのです。みんなものすごくうまいです。今やサッカーも底辺が広がり、少年団などで小さい頃から始めた子も多いでしょうから当たり前といえば当たり前なのですが、それにしても本当にみんな上手です。私の時代では考えられません。私の時代は、だいたい強豪校とやるときはゲーム前の調整練習観て「やっぱすげぇや」と思い知らされ、すでに負けてました。
話は戻りますが、このようにフリーな状態での個々の技術のレベルに大差はないのに、試合になると大差になってしまうのは、ゲームになるとその技術が『CDAサイクル』のスピードと精度に活かされないからなのです。フリーではそこそこの技術が発揮できるのに、ゲームだとできないというのはプレッシャーのある状況下や複雑な状況下になるととたんに発揮できなくなるということなのです。
なぜなのかは私にはわかりません。
分析能力の長けた方々にゲームで『CDAサイクル』を速く正確にプレーできる頻度の高い選手について、その幼少期から追っかけてみていただいたり、実際に今どういう練習をしているのかを分析してみたりしていただかないと、わかりません。
ただ、何となくですが幼少期から少年期(ゴールデンエイジ)までの基本技術の習得過程にヒントが隠されているような気がします。
お久しぶりです。
「いい選手」とは、真剣に読ませて頂きました。「いい選手だなー」って皆さんよく言いますけど、何をもってそういっているのか??私には何気にギモンだったのでとても参考になりました!!
アルディージャの試合もぜひ一度観に来てくださいね!
投稿: ayako | 2006年9月28日 (木) 01:44
ayakoさん
コメントありがとうございます。ゲームで選手個々を観る際に思い出していただければ幸いです。ここのところアルディージャは苦戦しているみたいですが、DAIGO選手がいるから大丈夫です!ゲームを観にいくときはお声かけます。
投稿: kumazemi | 2006年9月28日 (木) 09:42
はじめまして。東京の高校サッカー選手権大会も佳境に入って10月22日が待ち遠しくてたまらない高校生の息子を持つサッカーファンです。 kumazemiサンがおっしゃるようにボールを扱う技術は大変レベルアップしているので、たとえ予選大会であっても各学校のチームに特色があっていろいろなポイントから試合観戦と論評を楽しんでいます。私が高校の頃は、藤枝東の長池先生が浜名高校との戦術の違いを縦とつなぎの対極で聞かせてくれましたが、最近のチームは高校生であっても幾つかの戦術を持っているのでうまく機能させることが出来るかどうかを技術面、体調面、精神面などから分析しながら見ることも出来ます。ましてや、自分の息子がプレーするチームですと見え過ぎてしまって公式戦などは妙に冷静に応援をしていたりします。 さて、フリーの状況とプレッシャーのある状況での比較ですが、基本的にはフリーの状況から仕掛けが始まることが多いのですからフリーの状況でどうプレーをするのかということは大変重要です。最近ではGKもパントキックばかりでは無くフリーのディフェンスに渡して攻撃を組み立てていくケースが多くなっています。フリーの状況のときに的確な判断と良いフィード・パスやドリブルが出来なければ次に良いプレーが生まれません。練習のときから敵を意識して体の向きボールの持ち方等を次のプレッシャーがかかる状況に対しても準備できているかどうかが重要です。一時期一対一で勝負が出来るかどうかが最も重要ということも言われていましたが、私の考えは局面局面での勝負よりもスペースをクリエートしながらボールもプレーヤーも面で動くようなサッカーを期待しています。
投稿: fujito | 2006年10月 1日 (日) 22:26
fujito様
このような真剣なコメントをお寄せいただき、大変うれしく思っております。ありがとうございます。私もゲームを見ていて「敵を意識して体の向きボールの持ち方等を次のプレッシャーがかかる状況に対しても準備できているか」ということがいかに大切かがわかりました。もし差し支えないようでございましたら、藤枝東の長池先生のお話をお聞きできればと思いました。選手権予選の方は、10月22日が今からドキドキワクワクですね。
投稿: kumazemi | 2006年10月 1日 (日) 23:24