お母さんのためのフットショー講座3
相手を抜く~1対1の局面でフェイントなどを使って相手を抜き去り突破するメカニズム~
10月22日に行なわれた選手権東京都大会Bブロック準々決勝の東京朝鮮vs大東大一のゲームから私のイチオシの大東大13番の選手の突破シーンで説明します。
写真左まず対峙したこの場面、大東大一13番の選手は相手DFの足を見ながらjボールを間接視野※1に入れて足元にキープし、シザースフェイント※1を仕掛けようとしています。大東大一13番の選手が自分の足の動きを観ていることがわかっている東京朝鮮DFは、不用意に飛び込むとかわされるため、ボールが大東大一13番の選手の足元から離れる瞬間にすぐアタックできるよう距離を保っています。もし大東大一13番がボールキープに精一杯でボールばかり見ていたら、①の場面前にボールを奪われてます。
写真中大東大一13番の選手がは右足を内から外へまたぐシザース※2をかけます。このようにシザースはボールをまたぐわけですが、このまたぐ際にボールに触れてしまうと当然ボールが動いてしまいます。この場合は内から外へかけていますから、右足がボールに触れてしまうとボールは写真手前側に動いてしまい、アッという間にDFに体を寄せられてしまいます。ここでも大東大一13番の選手はしっかりシザースかけながらも相手の腰から下の部分をきちんと観ています。
写真右そしてこのシザースフェイントにひっかかった東京朝鮮DFが写真手前側に大きく上半身のバランスを崩します。相手の腰から下の部分をきちんと観ていた大東大一13番の選手は左足のアウトサイドを使って逆側(写真向こう側)に抜けるべく右足から左足へボールを移行させていきます。
写真左写真手前側に重心が動いてしまった東京朝鮮DFは逆をつかれて体制の立て直しに入りますが、この場合重心が右足にないと立て直せませんので、重心の移動を行なわなければなりません。ここで「遅れ」が生じます。逆に大東大一の13番の選手は写真向こう側に踏み出すためにしっかり右足で地面を蹴り、ボールも逆のスペースに動かしています。実質上、これで勝負アリです。
写真中東京朝鮮DFが立て直して上半身を起こしたときにはすでに大東大一の13番の選手は逆をすり抜ける過程に入っていて、ボールもスペースへ運び出されています。まだ重心が左足に残っている東京朝鮮DFはもはやボールにアタックすることはできません。
写真右このまま大東大一の13番の選手は東京朝鮮DFを抜き去っていきますが、東京朝鮮DFは抜かれたものの結果的に写真向こう側に抜かせて離れずに並走したので、この後大東大一の13番の選手はシュートを打つことができず、ゴール前ややマイナスめにいた見方へのパスを選択しました。手前側を抜かれると一気にゴールニアポストまで行かれ、ニアサイドにシュートを打たれたか、もっと危険なマイナスのパスを出されて失点に繋がっていたかもしれません。ただし、この場面で手前側へ抜き去る場合はスペースの少ないところに行くことになりますので、完全に置き去りにしないと再度体を寄せられてゴールライン外に体ごと押し出される可能性もありました。よって、相手が鍛えられた東京朝鮮だったことを考えるとゴールにならなかったもののフィニッシュまで行ったこのプレーは正しかったと思います。
ちなみにこのプレーは正味2.5秒~3.0秒くらいの出来事だったと思います。
こういった局面を個人の力で打開することはとても大切です。ゴールデンエイジ(小学生中学年~高学年)で足元のボールを間接視野に入れて相手や周囲の状況を観る能力とマシューズ※3、シザースといったフェイントの技術は一定レベル以上習得しておかないと、都大会準々決勝に残るようなチームでレギュラーになるのは難しいのではないかと思います。
- ※1 意識して見ようと焦点を当てているものの周りに見えるもの。
- ※2 ボールを内側から外側にまたいで相手を動かし、その逆を抜くフェイント。シザースとは「鋏」。
- ※3 左(右)に行くと見せかけて左足(右足)を大きく踏み込み、右足(左足)のアウトサイドで素早く右(左)に押し出して抜くフェイント。このフェイントをよく使っていたイングランドのスタンレー・マシューズからその名がついています。
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